不乗森神社(のらずのもりじんじゃ)

 

冷泉(れいぜい)天皇の安和(あんな)年間(968~970)に近江国(おうみのくに)坂本(さかもと)(現在の滋賀県大津市)の日吉大社(ひよしたいしゃ)から勧請(かんじょう)したと伝わります。従って、祭神は大山咋命(おおやまくいのみこと)です。他に神明社や社口社などが合祀(ごうし)されていますので天照大神(あまてらすおおみかみ)や猿田彦命(さるたひこのみこと)も祀(まつ)られています。境内(けいだい)の北を鎌倉街道(かまくらかいどう)が通り、通行の際は下馬(げば)して拝礼(はいれい)するのを例としたとされたことから「駄野森(だのもり)」→不乗森(のらずのもり)とも言いました。これが神社名の由来です。

大山咋命とは、山(=土地)に杭(くい)を打って誰のものであるかを決めることができる神様であって、地主(じぬし)の神様とも言います。広くは山水(さんすい)を司(つかさど)り大地(だいち)を支配(しはい)してそこで生産(せいさん)される産物(さんぶつ)をも守護(しゅご)する神様です。

八幡様は鳩(はと)、春日様は鹿(しか)、熊野様は鴉(からす)が神様の使いですが、当社は日吉社ですので猿(さる)です。「神猿」と書いて「まさる」と言います。「まさる」とは「勝る」ですが、魔(ま)が去(さ)るとも言われて、お猿さんが大切にされています。

湯立神事(ゆだてしんじ)は、毎年3月9日の祈年祭(きねんさい)とあわせて行われます。湯立神事とは、米(こめ)、麦(むぎ)、綿(わた)、豆(まめ)、粟(あわ)の文字を紙に書いて神前(しんぜん)に供(そな)え、祝詞(のりと)を上げた後に、お湯の沸(わ)いた釜(かま)の中に入れ、笹(ささ)の葉(は)でかき混(ま)ぜて豊凶(ほうきょう)を占(うらな)うという安城市指定の民族無形文化財(みんぞくむけいぶんかざい)です。一般(いっぱん)の参拝者(さんぱいしゃ)は、混ぜた笹の葉に付いたお湯のしずくをかけてもらうと痛(いた)いところが癒(い)えたり幸福(こうふく)が来たりすると言います。

 

神社裏(じんじゃうら)の鎌倉街道沿(ぞ)いに、近くに住んでいた梅泉庵芳水(ばいせんあんほうすい)という人が詠(よ)んだ歌碑(かひ)が、あります。

♪ 馬(うま)降(お)りて 神(かみ)の威徳(いとく)を かしこみて 鎌倉街道 過ぎしもののふ ♪