古代の村では、市場(いちば)の開設(かいせつ)と同時(どうじ)に市の神(いちのかみ)を祭りました。神は幸を与えてくれるものと信じられていたからです。神体(しんたい)には卵型(たまごがた)・球形(きゅうけい)などいろいろな形(かたち)の自然石(しぜんせき)を選び、二個(にこ)安置(あんち)するのが、太古(たいこ)の形といわれます。律令(りつりょう)時代(7~9世紀)に安城は、大市郷(おおいちのさと)と呼ばれ大きな市があって郷の名が起こったものと思われます。きわめて珍(めずら)しい古代(こだい)中世(ちゅうせい)の遺物(いぶつ)です。路上(ろじょう)に置く自然石は、市場神(いちばがみ)と呼ばれ、市場の守護神(しゅごじん)として、取引(とりひき)の安全(あんぜん)を保(たも)ち、商(あきな)いの興隆(こうりゅう)を約束(やくそく)するものと信じられてきました。東尾(ひがしお)と呼ばれるこの地域(ちいき)には、エベス(恵比寿の方言)石(女)と大黒石(男)という一対(いっつい)の楕円形(だえんけい)の自然石がまつられています。現在、エベス石は、市杵嶋姫(いちきしまひめ)神社のご神体となっており、大黒石(だいこくいし)の約50mほど東にあります。