境目首折地蔵(さかいめのくびおれじぞう)

安城八景之五

撫子や 利生あらたな 辻仏  仙風舎柳月 (なでしこや りしょうあらたな つじぼとけ)

現在は首無地蔵として、池浦町丸田の交差点にあります。柳月によれば、「刈谷から岡崎に向かう道に三本松があった。ここに性悪の古狐が住み、往来者を化かして道を迷わせ困らせていた。しかし、この地蔵の近くに来ると、その幻覚も消失していった。今でも、願いがかなうと、多くの参拝者が訪れている」といいます。

この辻仏のお地蔵さんには次のようなお話しが伝えられています。

以前この辺りは迷路のような荒れ野でした。刈谷や岡崎へ通う人々も時々ここで道に迷い、狐にたぶらかされると言っていました。お地蔵さんは三本松の辺りにあり「三本木の地蔵さん」と呼ばれ、道標(みちしるべ)の役目をしていたのです。明治用水が流れ、池浦(いけうら)も開墾が始まりました。ある日、くろくわ(土木工事)に来ていた男が備中鍬(びっちゅうぐわ)で地蔵さんの頭をたたき首を折ってしまいました。するとにわかに両目が痛み出しました。男は後悔し、お地蔵さんに謝罪しましたが、痛みは引いたものの片目は見えなくなってしまったそうです。これより首折地蔵と呼ぶようになりました。

その後、池浦の政八という男が目を病み、岩津の真福寺へ祈願いたしました。ある夜、夢枕に薬師さんが現れて「政八!三本木の地蔵さんに頼め」とのお告げがあり、夢から覚めるといくらか目が見えるようになっておりました。早速、三本木の地蔵さんに祈願すると、21日間で全治することができました。このことがあってから「政八地蔵」とも呼ばれるようになりました。

♪ ありがたや仏の慈悲に直されて お蔭にまなこ今見開きぬ ♪